高知を代表する歴史的建造物・高知城の漆喰修復
今回は高知を代表する歴史的建造物・高知城の漆喰修復をご紹介します。
高知城は江戸時代に建造された天守と追手門が共に現存している、全国的にも数少ない城郭です。
手前が追手門、奥が天守。追手門と天守が1枚の写真に収められるのは高知城だけといわれています。今回はその追手門と天守の窓部分の修理工事をご案内します。
追手門
屋根の下部が長年の風雨にさらされ、漆喰部分が浮いたり、割れたりしています。
① 塗り替えが必要な箇所を事前に調査しています
② 漆喰部分を剥がして、さらに下地が傷んでいる部分を補修します
[補修前]
[補修中]
[補修後]
③ 下地の補修が終わると、いよいよ漆喰塗り
まずは中塗り工程として砂漆喰を塗っていきます。
砂漆喰はその名の通り、砂と漆喰を混ぜ合わせたもので、漆喰の上塗りをしっかりと付着させるための工程で使用されます。
細かな箇所も丁寧に塗っていきます。
いびつな形に塗ったり、漆喰彫刻などを仕上げる際には画像のような細長い形のコテを使用することが多いです。このコテは柳の葉の形に似ていることから柳葉コテといわれます。
④ 中塗りをした後は上塗りに移ります
⑤ 丁寧に塗り付けたあと、押さえといわれる仕上げ工程を行います
押さえの工程は漆喰の表情を平滑でなめらかにするだけではなく、雨水に対する強度を高めることが可能で、漆喰工事では非常に重要な工程です。
土佐漆喰独特のベージュがかった色合いになっています。この色は土佐漆喰に配合される稲わら繊維の色素で、漆喰壁として仕上がった後、雨水に濡れたり乾いたりすることで徐々に薄くなり、最終的に1年程度で少し黄みがかった柔らかな白色になります。
⑥ 完成
今回塗ったところと塗っていないところが一目瞭然です。
この色の違いは徐々に解消されていきます。
天守
天守の壁も広範囲で傷んでいますが、今回は窓部分の漆喰を修理します。
① ほぼ漆喰面が剥離し、浮いている状態です
雨漏りや剥落の危険もあります。
② まずは漆喰を含む下地をすべて取り除きます
漆喰を取り除くと、木材にしゅろ縄を巻いた下地が出てきました。
この下地に漆喰を食い込ませていたわけです。
③ 下地も作り変えます
④ 下地が整ったら漆喰を塗っていきます
⑤ 完成
とてもきれいな状態に生まれ変わりました。
建築当初用いられた工法を使う修復の現場
土佐漆喰は、高知の激しい降雨から建物を守ることができる極めて強固な漆喰として全国的に評価を頂いております。しかし、今回の高知城の修理では前回の修理から70年以上経過してかなり痛みが生じていたようです。
文化財の修理は、建築当初用いられた工法を使う必要があります。今回施工した左官業者さんは30歳代、40歳代の若い職人さんが中心となり、ベテランの職人さんにアドバイスを頂きながら仕上げたということでした。
修理された高知城だけでなく、伝統的な工法を次世代に伝えるための非常に貴重な工事だったと思います。
[今回使用された弊社漆喰製品]
土佐漆喰「本造り純ねり」
https://www.tanakasekkai.jp/lime-department/tosa-shikkui/index.html
[執筆:スタッフI]