漆喰は、古くから世界中で使われています
原料としての石灰に糊などを添加した漆喰は、歴史的な建造物から一般の住宅までさまざまな壁に古くから利用されています。
国内では、姫路城を始めとするお城や寺社でよく使われていますが、海外ではどのような場所で、どのような理由で利用されていたのでしょうか。今回はその歴史を一緒に辿ってみましょう。
【エジプトでの漆喰の始まり】
まずは、紀元前2000年から3000年頃のエジプトで漆喰が使われたことが記録に残っています。この時代はピラミッドの建設が盛んでしたが、なんとこのピラミッド建設に漆喰が使われていました。その用途は、意外にもピラミッドを形成する石と石をくっつける接着剤としての役割でした。現在は、セメントやモルタルがその役割を果たしています。この頃は、石がピラミッドの主役で、漆喰はそれを支える存在だったのですね。
【中央アジアを経由して中国へ】
そのエジプトから中央アジアを経由し、漆喰は中国に伝来しました。中央アジアではエジプトでの使用方法と同じように、日干レンガの接着剤として使用されたそうです。
そして、中国でも同様に接着剤として使用されましたが、さらに糊として米粉や膠(にかわ:※1)、スサ(※2)として動物の毛を入れた、現在の漆喰の原型となるものがこの時期に完成しました。漆喰の原料である石灰は強アルカリ性のため、殺菌や消毒の効果があることから、住居の室内に塗られていました。
【シルクロードを渡り日本へ】
その後、中国からシルクロードを渡り、漆喰はいよいよ日本にも伝来しました。西暦700年頃描かれたと思われる、奈良県の高松塚古墳の壁画にも漆喰が使われています。
そして、壁材として使用したところ、中国よりも頻発する地震が問題になりました。そこで海藻糊や麻スサなどを取り入れ、地震の揺れへの耐久性を高めた漆喰に改良されました。そのため、この後漆喰を用いて建造された建物の中には、改修を重ねながらその姿を現在も留めているものが数多く存在しており、この伝統的な工法を守っている寺社なども数多くあります。
※1 “膠(にかわ)とは・・・“物の骨,皮,腱 (けん) などから抽出したゼラチンを主成分とする物質。木竹工芸の接着剤あるいは東洋画の顔料の溶剤など用途が広い。通常,板状か棒状に乾燥させて保存し,湯煎によって適当な濃度に溶かして用いる。”コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典より
※2“スサとは・・・しっくい塗,ドロマイトプラスター塗の左官工事で塗材料に混合するもの。わらすさ,紙すさ,麻すさなどの種類があり,長さ3~5cmの繊維質のもので,材料をこね合わせるときに混ぜ,乾燥後の収縮ひびわれを分散させるのに効果がある。混入量は多いほうがよい。土物壁ではわらすさを用い,紙すさは,上等なしっくいの上塗に用いる。” コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)より“
[執筆:スタッフF]