たいへん、ご好評いただいております「漆喰をめぐる旅」第5弾は、田中石灰工業の地元・高知県のお隣、徳島県からお伝えします。
四国のまほろば、徳島県美馬市
当社の工場がある高知県南国市は「土佐のまほろば」と呼ばれていますが、「四国のまほろば」をキャッチフレーズにしているのが徳島県美馬市です。
美馬市は、香川県から高知県まで四国を北から南に縦断する際、ちょうど真ん中あたりに位置しています。
両地域とも、「まほろば」という言葉が意味する「素晴らしい場所」「住みやすい場所」のイメージどおり、大きな川の流域であるため水資源に恵まれ、広大な農地が拓けた豊かな印象があります。
さて、今回はこの美馬市にあり、四国でも有数の漆喰の町並みとして知られる、脇町のうだつの町並みをご紹介します。
特産物「藍」で栄えた脇町
1585年に阿波藩主となった蜂須賀家政は、第一家老を美馬市のこの地域に遣わしました。
その後、藩では阿波藍が奨励され、この脇町の繫栄に繋がりました。
そういったことから今も、その象徴である藍が至る所に使われています。
“うだつ”とは?
美馬市脇町には、江戸時代から明治時代に建てられた歴史ある漆喰の住宅が80件以上現存し、当時の繫栄の様子が残る「うだつの町並み」があります。
皆さんもきっと「うだつがあがらない」ということわざを耳にしたことがあるでしょう。
その意味は、いつまでもぐずぐずしていて、一向に出世できないことでした。
その“うだつ”とは、一体何のことかわかりますか?そして、「うだつの町並み」という名のとおり、ここには現存する“うだつ”がありました!
そして、建ち並ぶ住宅の境目に、それぞれの“うだつ”が競い合うように張り出しているのがわかりますか。
このように、元々は防火の役割を果たしていた“うだつ”ですが、いつしか高い位置にあるほど財力がある富の象徴となっていったそうです。
そこから、「うだつがあがらない」ということわざが生まれたのですね。
様々な特徴ある建物たち
【虫籠窓(むしこ窓)】
この建物の二階部分の格子状の窓が格子状になっていますが、これは窓の形が虫を入れる籠に似ていることから「虫籠窓(むしこ窓)」と呼ばれています。
木を使った窓や練り土に漆喰を塗って堅牢に造り、本来は盗難除け、また部屋の明かり採り、風通しを良くするため等の理由で造られました。
しかし時代とともに、次第に装飾的な面も兼ねるようになりました。
【格子造り(格子窓)】
「格子造り(格子窓)」とは、細かい角木を縦横に間をすかして組み合わせ、窓や出入口に取り付ける建具のことです。
細かな格子は居住空間、大まかな格子は店空間に用いられています。
また、漆喰の壁に施されたなまこ壁の装飾がアクセントになっていますね。
イベントで飾られた生け花
この町並みの観光拠点となっている吉田家住宅では、華道家であり様々な方面でご活躍されている假屋崎省吾さん監修のもと、室内の様々な場所に生け花を展示するイベントが毎年開催されています。
私がこちらに伺ったのはちょうどイベント開催期間でしたので、華麗な生け花がたくさん配置されている様子を見ることができました。
写真を少しだけ載せておきます。
流木を活かした大作は、もはやアートですね。
このイベントの正式名称は「假屋崎省吾 うだつをいける」で、毎年開催されています。
四国有数の漆喰の町並みであるうだつの町並みと、その歴史ある建物の中で躍動感のある花の美を、一度に体感できる絶好の機会です。
皆様もぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
そして、今回ご紹介したのはこの町並みのほんの一部です。
訪れる人によって、また季節によって、新たな魅力を発見できるのではないでしょうか。
(参考資料:美馬市観光協会・美馬市商工観光課・美馬市脇町のパンフレット)
[執筆:スタッフF]