文化財保存修理工事現場に行ってきました
今回は高知県香南市にあります国指定の重要文化財「安岡家住宅」の保存修理現場をご紹介します。
「安岡家住宅」は平成17年に重要文化財の指定を受けました。
その後、平成24年から大規模な保存修理工事が行われており、田中石灰工業の土佐漆喰「純練り」も多く使用されています。
※安岡家住宅に関する詳細はこちら
工事内容
平成24年7月1日から平成31年6月30日まで敷地内の建物を解体し、修理していきます。
設計監理は公益財団法人文化財建造物保存技術協会。姫路城の平成の大修理でもお世話になった、国内の文化財保存修理工事を牽引する団体です。
母屋
平成29年3月竣工。
純白の漆喰壁といぶし銀の屋根瓦のコントラストがすばらしいですね。
瓦に映える漆喰はとても人手による施工とは思えない美しさです。
瓦と瓦の境目に防水処理や意匠目的として塗る漆喰を目地漆喰と言います。
土佐漆喰は一般的な漆喰よりも厚く塗ることができるため、画像のように存在感が大きな目地漆喰になります。
軒下に置かれている手水鉢もいい雰囲気です。
米蔵
現在、解体し基礎部分を発掘調査中です。
勿論基礎周りの石は再利用できるよう番号管理されています。
米蔵敷地の片隅に残されたこれは・・・
正解はお風呂でした。勿論、復元修理対象です。
懐かしさを感じます。
石灰石発見
田中石灰工業としては大変親しみ深い石を発見しました。石灰石です。用途は何でしょうか?
正解は石垣の裏に詰める石として使うものです。
実は安岡家住宅は建屋以外に石垣も文化財としての指定を受けているのです。
石垣解体中には2回ほどマムシと遭遇したそうです。
雪隠(せっちん)
雪隠とは現在で言うトイレのことです。
骨組み修理の真っ最中です。
屋根は竹簾(たけす)でしょうか。よく見ると編んでいる縄はツル縄です。
肝心の内部は雪隠らしく2つの槽(肥溜め)がありました。
今後使用することはありませんが、復元はしっかりと行います。
オーナー様の住居部分
こちらは現在、内装の大工工事真っ最中。
漆喰工事は完了しています。
土佐漆喰の特徴であるうっすらとした黄色味が素晴らしいです。
遅ればせながら、土佐漆喰とは台風銀座と呼ばれる高知県の気候に対応した、非常に耐久性の高い漆喰です。仕上がりの美しさと堅牢性が高く評価され、現在では漆喰の最高級品として全国的に認知されています。
通常、漆喰と言えば白を想像される方がほとんどですが、土佐漆喰はベージュ色。
施工直後の色味も白色では無く、薄い黄色味がかった色なのです。
ところが、施工後、数カ月から数年で徐々に白くなり、最終的には少し黄色みが残った柔らかい白色になります。
大工さん作業小屋 ◯解体した資材の保管
まるで建築資材の歴史博物館のようです。
扉、雨戸、ふすま、障子なども全て保管しています、
なんと瓦葺き用の土まで解体時の状態で保管中。
瓦はこれで全部ではありません。まだまだありますよ。
左官材料置き場?
ブルーシートの下は大量の壁土です。地元の土とワラを混ぜ合わせ寝かせ中。
最後に当社の製品をどうぞ。
今回ご紹介した現場は左官さんをはじめ、大工さん、石工さん、元請けの監督さんなど各界のエキスパートが集結して初めて成し得る工事だと思います。
そしてその貴重な文化財の修復工事に田中石灰工業の製品が使われていることは大変ありがたく、また、誇らしいことだと改めて痛感しました。
今後も田中石灰工業の伝統に恥じない品質を堅持し、また、タナクリームの様に、一般の方にも広く使って頂ける商品とともに地道に販売をしていきたいと思います。
[執筆:スタッフI]